私は日本人の働き方が、これから大きく変わっていくと思います。
日本は戦後から90年代前半のバブル崩壊まで、ほぼ安定的に経済成長を遂げ、その後の20年は停滞しました。
停滞した20年の間に、終身雇用や年功序列が実質的に崩壊し、会社が社員を家族のように守れる時代が終わりました。
正社員比率が減少し、契約社員や派遣社員の比率が高まりました。
女性の進出が(以前に比べれば)進み、外国人労働者も増えました。
では次の20年、日本人の働き方はどうなるのでしょうか?
「仕事の選択肢と働き方の多様化」が急速に進むと思います。
1、少子化により、会社>個人 から 個人>会社へ
少子化、若者の減少が激しい勢いで進行しています。
総務省の2013年の統計では、日本の人口のうち、0-14歳の人口は全体の12.9%しかいません。
他国は、アメリカ19.5%、イギリス17.6%、ドイツ13.2%、インド30.8%、中国16.4%、韓国15.1%。
日本はどこよりも低い比率です。
2013年時点で日本の30歳代の人口は1670万人、20歳代は1310万人、10代は1180万人と、若くなるほど減少します。
人口が減るという事は、1人当りの人材の稀少価値が上がります。
よって企業は人材を採用するのが難しくなります。
逆に個人にとっては仕事を選択する機会が増えます。
経済が発展し人口も増える時は「会社が人を選ぶ時代」ですが、これからの日本は「個人が会社を選ぶ」時代に入ります。
個々の企業や個人によって勿論事情は違いますが、大きな流れとしては、いずれの企業も人材不足に見舞われ、採用が本当に大変になります。
人材を獲得する力があり、多くの選択肢の中から個人に選ばれる企業が発展する時代です。
2、共働きの増加が働き方の選択肢を広げる
皆さんも恐らく感じているのではないでしょうか。
最近結婚するカップルの多くは結婚後も出産後も夫婦共に仕事を続けます。
20年前であれば、結婚退職や専業主婦を選ぶ女性が大半だったので、大きな変化です。
こちらの統計でもそれがよくわかります。
第1-3-17図 共働き等世帯数の推移 | 内閣府男女共同参画局
私は共働きが増えるのはとてもいい事だと思います。
共働きの長所は2つの収入源があるので、キャリアを柔軟に考える事ができます。
どちらかが子育てで休んでももう一方が稼ぐ。
どちらかが頑張って稼いでいる間、もう一方は休職して勉強し次の仕事に備える。
このような複線的な選択が可能となります。
夫1人が家計を全て背負って、どんな嫌な事も我慢して定年まで会社にしがみつくという選択肢が必要ではなくなります。
共働き家庭は家事や子育てを奥さん任せにしないため、「毎晩残業か接待、土日はゴルフ、子育ては殆ど100%奥さんの仕事」といういびつなお父さんが減り、子供の教育にも良い影響があるはずです。
3、高齢化による介護負担がキャリアの選択を迫る
2013年時点で65歳以上の人が国民の4人に1人を占めます。
20年後の2035年には3人に1人が65歳以上になると予想されています。
お年寄りがこれだけ増えれば要介護の方も増えます。
70~80歳の方の子供が40~50歳位だとすると、企業で重要なポジションについている方々、出世競争の最終コーナーに差し掛かった人達が親の介護という避けて通れない問題に、これからどんどん直面するのです。
親の介護をするとなると、今までのように普通に出勤して残業や夜のお付き合いに行くことはできません。
とはいえ、まだ子供の学費など負担も大きい年齢です。
この時、個々のビジネスパースンはどのような働き方を選択するでしょうか。
短時間勤務に変えるのか、退職して家の近くで新しい仕事を探すのか、個人で独立して介護と両立を目指すのか。。
色々な選択肢がありますが、大事なのは問題に直面する前にちゃんと備えができているかです。
4、新しい企業の台頭が仕事の可能性を広げる
日本は大企業志向が強く、起業が難しい時代と言われてきましたが、ここにも変化が起き始めています。
大企業とはいっても、本当に強い競争力と将来的な安定感を備えた企業は多くありません。
しがみつく価値があるほどの大企業は、幸か不幸かこの20年で随分減ってしまいました。
一方で新しいベンチャー企業が多数生まれ、そういう企業が人材を惹きつけるようにもなりました。
若い世代では、気負いなく自然体で起業にチャレンジする人も出てきています。
これは当然の流れでもあります。
人々のライフスタイル、働き方、好み、週末の過ごし方などの差異がどんどん広がり、例えば「猛烈サラリーマンの夫と専業主婦の妻」といった単純な夫婦像はもはや架空のものになろうとしています。
結果として商品やサービスが更に多様化し、小さなニーズに合わせた小回りのきく商品やサービスが求められ始めました。
小回りのきくサービスは大企業より中小企業が得意な領域なので、今後新しいベンチャー企業やサービスがどんどん出てくるでしょう。
ベンチャー企業や中小企業は、大手企業に比べて働き方が柔軟な側面もあります。
新しい企業の台頭は、きっとビジネスパースンの仕事の選択肢や働くスタイルを多様化してくれるはずです。
働き方の変化が生じる要因について幾つか書きましたが、私が伝えたかったのは「仕事の選択肢と働き方の多様化」がこれから起きるという事です。
人生の選択肢が増える素晴らしい時代でもありますが、過去と比べた変化が大きいため、ついていける人とそうでない人の差が開きます。
会社や社会の変化に流されるだけの受け身のキャリアではなく、自らのキャリアを能動的に考え、節目節目できちんと決断していく事が重要な時代です。