先週後半、珍しく体調を崩してしまいました。
滅多に風邪をひかないのが自慢でしたが、いけませんね...アポイントもキャンセルし、ご迷惑をおかけしてしまいました。
お医者さん曰く、最近は胃腸からくる風邪がはやっているそうなので、皆さんも体調管理にお気を付け下さい。
そんな先週の前半、ホンダが、子会社を含む4万人を対象に、定年延長を軸とする新しい人事制度を発表しました。
幾つかのニュースを見ましたが、この人事制度は現在のホンダの置かれている環境、社会構造の変化、これからの未来を踏まえ、良く練られた制度だと思いました。
日本の定年退職に関するルールは、60歳で定年退職した人のうち希望者を会社が再雇用するものですが、ホンダはデフォルトで定年を65歳に延長すると決定。大企業の中で先陣を切りました。
更にこの制度から見えてくるのは、単なる定年延長の話ではなく、サラリーマンのこれからの働き方に対する幾つかの示唆です。
・60歳で引退する時代は終わり
・60代の給与格差が拡大する
・20代~50代は更に会社への実質的貢献が問われ、報酬は成果に連動する
・子育て/介護と仕事を並行して働く人が当たり前になる
60歳で引退する時代は終わり
既にこの動きは顕在化していますが、より加速していくでしょう。
下のグラフは、65歳以上の就業者数の増加、企業が最も欲しがる25~34歳の就業者数の減少ぶりを示したもの。この流れは止まりませんね。
年金の受給開始年齢は、既に段階的に65歳へ引き上げられていますが、財政状況を考えると70歳への再引上げも想定され、早々60歳で引退したら生活が成り立たなくなる時代です。
60代の給与格差が拡大する
ホンダが定年を引き上げたのは何故でしょうか?
それは60歳超の社員が残ってくれないと困るからです。従前は60歳定年を過ぎると元の給与の50%で再雇用していましたが、今後は80%に引き上げる。つまり、それだけ残って欲しい人材なのです。
ホンダは近年リコールなどの品質問題が頻発し「技術のホンダの終焉」とまで言われました。ベテラン技術者の退職が技術力低下の一要因であったため、彼らに残ってもらわないと生存競争に勝てないという危機感がある筈です。
ホンダの技術者は退職したら海外メーカーから声がかかる売れっ子。ホンダもみすみす退職させるわけにはいきません。
定年延長のメリットは誰もが享受できるわけではない
若手人材が減少する中、高い技術力、強固な人脈などを持つ人、専門性の高い人、マネジメントに長けた人材などは60歳を過ぎても職に困らないでしょう。自ら仕事をやめたくなる日までバリバリ働けます。
しかし気を付けなければならないのは、誰もがそうなれるわけではないことです。
これといった特技のない人は、60歳以降の継続雇用を会社から歓迎されるとは限りません。会社によっては、ベテランのノウハウや経験知を必要としないところもあるでしょう。
仮に定年後会社に残れたとしても、報酬は従来の半値程度にダウン。
介護や飲食・サービス系の仕事は歓迎されますが、体力的に厳しく給料は従前より遥かに低くなってしまいます。
結果として今後は60代の給与格差が広がります。能力があれば50代の自分に負けない高報酬を得られ、過去の経験や能力が生かせない人は低い報酬の仕事を選ばざるを得ません。
サラリーマンは40~50代のうちに、60歳以降も通用する強み、専門性を意識して磨きをかけておくべきです。
20代~50代は更に会社への実質的貢献が問われ、報酬は成果に連動する
今回のホンダの新制度は、定年延長と並行して、会社の総人件費抑制が考えられています。
定年延長で60歳以降の人件費を上げると決断した一方で、国内出張手当ては廃止、時間外手当の割増率も下がります。成果連動給与の割合も更に高くなるようです。
つまり60歳以下の社員の”成果に直接連動しない報酬”は減ります。成果に連動する報酬の割合が高まる反面、年功給や職能給などの固定的報酬の割合は下がる筈です。
企業は総人件費の増加に慎重。どこかを増やせば、別のどこかを抑制する必要があります。その調整過程で、どんどん成果連動部分の大きい報酬体系に近づいていくのではないでしょうか。
「子育て/介護」と「仕事」を並行して働く人が当たり前になる
ホンダの新制度では、扶養手当を廃止する代わりに、育児介護手当てを新たに導入し、在宅勤務も取り入れる。
専業主婦世帯、子供が大きい世帯の手当てを減らし、育児と介護に対してお金の面でも働き方の面でも支援するスタンスが明確に出ています。
従来は専業主婦家庭に手厚い福祉制度でしたが今後その恩恵はなくなり、働きながら育児・介護をする夫と妻の双方に対して手厚く支援する流れです。
最近私の同世代でも親の介護で仕事を調整する人が出てきました。これからは誰しも避けて通れない問題ですが、国と企業が適切なサポートを行い、仕事と両立できる事を祈ります。
今回のホンダの新制度は、ホンダ固有の事情に拠る部分もありますが、他は多くの企業に参考になるものだと思いました。ご自身のキャリアを考える上で参考になれば幸いです。
※冒頭に体力が落ちている話に触れましたが、まずは手軽にこういう運動くらい、始めた方がよさそうですね。「インターバル速歩」
※本ブログは新しいブログメディア『ツドイカツヤク研究所』に移転いたしました。
人材育成、組織活性化、経営、キャリアなどをテーマにお役立ち情報を発信しているブログです。
よろしければ是非ご覧頂けたら大変嬉しいです。
⇒ ツドイカツヤク研究所:https://tsudoi-katsuyaku.com
⇒ 筆者facebook:https://www.facebook.com/junichi.takei.58