日本人の給料はこれからの時代どのように変化していくでしょうか?
私は2つの傾向があると思っています。
・1つは個人間の給料格差がより拡大していく。
・もう1つは全体の平均的な給料は今後もあまり上がらない、下手をするとやや下がるのではないか、と予想します。
ごく平均的なビジネスパースンは、沢山もらう人との格差が更に開き、一生懸命働けど生活が豊かになる実感を得らない可能性が高いです。
従ってビジネスパースンが楽しく豊かで幸せなキャリアを築いていくためには、自分の能力や経験値をいかにして高め、収入に反映させていくかを考えていかねばなりません。
仕事は決してお金のためだけではありません。仕事のやりがい、成長、共に働く仲間が重要なのは勿論です。 (これについては少し前のブログで触れました。 ↓ ↓ ↓)
理想的な働き方 7ヶ条 – 自らつかもう! イキイキ幸せなキャリア
しかし日本人は(表向き?)給料にこだわらない人が多く、給料アップを自分の口からお願いするのは憚られる雰囲気があります。私自身もそういうタイプなのでよく理解できるし、日本人の良いところでもあります。
しかしそれが成り立ってきたのは、企業が安定的に成長拡大し、年齢と共にそれなりに給料が上がり、年金等の社会保障が手厚いシステムが機能していたからです。そもそも給料アップの交渉をしたり、給料を上げるため転職する必要性が少なかったのです。
ところが時代は変わりました。周知の通り、今の時代は仕事の役割や能力を上げていかない限り、給料は基本的に上がりません。給与の額面が同じなら保険や年金負担が増えるため手取りは減ってしまうのです。
では冒頭に書いた今後の2つの傾向のうち、1つ目の「個人間格差が拡大」するのは何故でしょうか?
格差拡大には私は3つの流れがあると思います。
- 高級管理職の給料がもっと高くなる
- 職種間の差が広がる
- 働き方や副業により差が広がる
1はグローバル給与体系と関係が深いです。既にユニクロのファーストリテイリングは世界同一賃金という方向性を打ち出し、日立もグローバル共通人事制度を進めています。今後こういう企業がどんどん増えてくる筈です。
ではグローバル共通制度にすると何が起きるのでしょうか?
海外の国々と日本の大きな違いは、日本では幹部層の給与水準が顕著に低い事です。
2015年1月26日の日本経済新聞「Global Data Map」にASEAN各国及び日米英独の報酬比較表が出ていましたが、日本の水準は部長級でタイと同程度、役員クラスではタイ・ベトナム・フィリピンよりも低い水準です。
私は昨年まで中国でヘッドハンティングをやっていましたが、給料が低いと思われがちな中国では、30歳前後で年収600万円位の人が沢山います。物価水準が日本の1/2~1/3なので日本の価値に置き換えると年収1200~1800万円です。こんな人、日本の企業には殆どいないですよね。
グローバル基準に合わせれば、相対的に低い日本の幹部層の給与は徐々に上がっていく筈です。同じ企業グループで同じ仕事をしているのに、日本人の給料だけ低くて海外の社員は高い、というのは長続きする制度ではないので。
グローバル給与体系のもう1つの特徴は年齢が給料には殆ど関係しません。仕事の内容に給料がリンクしています。
従って企業の給与体系がグローバルに近づいていくほど、能力ある人にとってはチャンスが広がり、そうでない人は差が広がる事になります。
2の職種間格差は既にITの職種などで顕著にあらわれてきています。
IT技術者は構造的に人手不足のため同年代同士で比べても給料が高い傾向にあります。更に同じIT技術者中でも職種のニーズによって大きな差がついています。元々同程度の能力を持った人が同じくIT技術者になっても、その選んだ職種によって給料に大きな差がつくという現象です。
これが他の職種にも少しずつ広がっていく可能性があると思います。今後少子化でどんどん人手不足が進むため、稀少価値の高い職種や高度な専門性を持った人は取り合いが激しくなり、給料が上がりやすくなるでしょう。
3の「働き方や副業により差が広がる」は見えづらい現象ですが、実は大きなインパクトを持っています。
総務省の「平成24年就業構造基本調査」では、5353万人の雇用者のうち、いわゆる正社員の数は3311万人います。
統計局ホームページ/平成24年就業構造基本調査の概要,結果等
この3311万人の大半は、1つの会社に勤務する普通のフルタイム社員の筈ですが、今後そういう人が徐々に減り、別の働き方が増えていく事でしょう。
例えば、1つの会社をメインの勤め先としつつ、夜や週末を使って別に2社の仕事をして同時に3社で働く。 勤務先は1つだけど副業をして収入源を複数持つ。 短時間勤務を選び収入は減るけど趣味をもっと楽しむ。 会社員時代の経験を生かして独立し個人事業主として複数の顧客を持つ。などのように働き方がもっと多様化すると思われます。
この多様化によって個人間の収入格差は広がりますが、これは個人それぞれの自由な選択の結果生じる格差です。自分自身がどのような働き方を選び、どのような収入を得るかについて、もっと個人が主体的に選択する時代になるのです。
企業も「正社員で優秀な若い人」にこだわり過ぎると人材が確保できなくなるので、多様な人材を上手く使っていく必要に迫られます。
ちなみに日本の多くの会社は就業規則で副業を禁じていますが、これは「副業しなくても当社で働けば一定の収入と安定が確保できますよ」という保証が対になっていなければ本来成立しません。「家族を養う給料は出せませんが、副業も禁止です」はちょっとおかしいですよね。一方で企業側も社員の役割が上がらない限り給与を上げるのは難しいため、今後副業を認める会社が増えてくるのではないでしょうか。
以上3つの流れを説明しましたが、これからの時代、個人間の給与格差は広がる方向にあります。
この流れは個人にとって決して悪い事ではありません。自らの努力や選択によって、より高い収入を得られる可能性が高まります。1社からの給与以外に収入源を持つ選択肢も出てくるでしょう。逆に給料にこだわらず生活をもっと楽しむという選択肢も増えます。
この大きな変化の時代においては、流れに身を任せているだけでは置いていかれます。
自分自身の働き方、ライフスタイル、得たい収入、それに向けて必要な経験、今やるべき事をしっかりと考えながら、自らのキャリアを築いていくことが大切です。
次回のブログでは、「日本人の平均的な給与は今後上がらない」と思う理由についてお伝えします。