有名なファンドマネージャーである藤野英人氏の本「投資家がお金よりも大切にしていること」(2013年発行)を読みましたが、非常に興味深い本でした。
目からウロコだったのは、「失われた20年」に関する株式市場の分析です。2002年から2012年まで10年間の株価の動きをみると、大企業は停滞した一方で、多くの中小企業は成長したという事実です。
2002年~2012年の10年間を通じてTOPIX(東証一部の全銘柄)は2%の上昇でほぼ横ばいでした。TOPIX CORE30という大手企業30社で構成された株価指数は24%も下落しました。ところが東証二部の会社は10年間で何と67%も上昇しているのです。
つまり東証一部の大手企業が停滞する中、東証二部には成長する元気な会社が沢山あったという事です。
更に2%しか成長しなかった東証一部においても、実は中小企業を中心とする約7割の会社は10年で利益が2倍になり株価も上昇しており、大手企業を中心とする残り3割の銘柄が足を引っ張った構図だったのです。
上記データは、この10年間に着々と力を蓄えた中小企業が沢山あり、株式市場でも中小企業の存在感がどんどん増してきている事を示しています。
最近よく「就職するなら大手とベンチャーどっちがいい?」みたいな議論がありますが、あまり実質的な議論とは思えません。どちらも一長一短で、成長できるか否かは本人次第だからです。しかも「大手」と「ベンチャー」のどちらにも属さない歴史ある優良中小企業が日本には沢山あり、そこも魅力的な就職対象だからです。
ただし「大手 or ベンチャー」議論はともかく、明確に言えることは、今後どんどん成長して雇用を伸ばしていくのは既存の大企業ではなく成長する中小企業だという事です。従って就職や転職においてここを外して考えたら選択肢が非常に狭くなり勿体ないのは事実です。
この本では他にもキャリアを考える上でのヒント、新たな視点や気付きをもらいました。
幾つか興味深かった内容を少しお伝えすると、
- 清貧の思想が日本を駄目にした。清貧ではなく清豊を目指すべき
- 日本人はめちゃくちゃ働くのに、心の中では仕事のことはそんなに好きではない
- 会社は「人生の墓場」ではない。人間が人間らしさを発揮できる場所であるべき
- 真面目な会社が減っている。真面目とは、お客さんのこと、社員のことを真剣に考え、売上利益の事ばかりでなく会社がどうあるべきかを本気で考える事
- 真面目な会社しか長期的に利益を上げることはできない
- 「真面目かどうか、成長しているかどうか」で会社を選べ
などなどでした。
ご興味ある方は是非読んでみて下さい。
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