皆さんの会社の5年後、今の事業構成はどのように変化していると思いますか?

事業ポートフォリオの組み立ては、大企業であろうと中小企業だろうと会社存続の生命線であります。

企業分析で抑える3つの基本

私が若手営業マンなどに「企業分析」の基本を教える時、まずは次の3つを抑えるよう伝えます。

a. 事業別(商品別)売上内訳
b. aの過去3~5年の推移
c. 営業利益の過去3~5年の推移

この3つを見れば、会社という生き物がどのように存続しているかがわかります。

現在の事業の柱は何か、数年後の柱は何か、市場環境がどう変化しているか、抱えている課題は何か、経営者は何を意図しているか、等々がくっきりと見えてきます。

 

2つ事例を出します。

グローバル食品大手のダノンは、10年間で事業ポートフォリオを大きく変化させました。

2004年当時の売上構成は、乳製品55%、飲料27%、ビスケット・シリアル18%。
2015年では、乳製品50%、乳幼児向け栄養食22%、医療向け栄養食7%、水21%。
10年間で何と半分の事業がそっくり入れ替わりました。

ここまでドラスティックに入れ替えた理由は何だったのでしょうか

それは経営理念です。
利益至上主義だった状態から、「社会的責任と事業成功を均衡させる」という創業の理念に回帰し、「食を通じて健康を届ける」事業のみに転換を決断。

ハム・チーズ、ビスケット、ビール、ソース事業などを矢継ぎ早に売却する一方、ベビーフードや有機食品の事業を買収しました。

売上2兆円のダノンが10年間で半分の事業を入れ替えるというのは、経営の強烈な意志とリーダーシップの賜物としか言いようがありません。

 

キャノンが事業ポートフォリオ組み替えのために見せた執念

近年日本で印象に残っているのは、昨年キャノンが東芝メディカルシステムズを買収した一件です。

2016年当時売上3.4兆円のキャノンが、売上約3000億円の東芝メディカルを死にもの狂いで買収にかかりました。

市場からは“高値づかみ”と言われ、その強引な手法が買収競合だった富士フィルムから批判もされましたが、何が何でも手に入れるという迫力、御手洗会長の執念が感じられました。

キャノンの2大事業(事務機器とカメラ)は成長性に陰りが見えていたので、次の10年勝ち残っていくために何としてもメディカル事業が必要だったのです。

 

中小企業にとってもポートフォリオは成長の生命線

ダノンもキャノンも世界的な大企業ですから、「中小企業はそんな簡単に事業ポートフォリオを組みかえられないよ」とか、「うちはそもそも単一事業の会社だから、ポートフォリオも何もないよ」という声が聞こえてくる気もします。

ただ少し考えてみて下さい。
仮に単一の事業そのものに5年後、10年後の将来性がないとしたらどうしますか?

座して待つわけにはいきません。

 

事業ポートフォリオの組み換えは、事業規模や資金力の問題ではなく、生存し続けるための経営の意志の問題ではないでしょうか。

 

私のクライアントの中小企業でも今まさに事業の将来を見据えた格闘をされています。

創業者であるお父様が作り上げたアウトソーシングビジネスから徐々に退却戦を行いつつ、新たな人材ビジネスを成長させているケース

・収益源だった事業が急速に衰退しており、その代わりの柱づくりに待ったなしで取り組んでいるケース

 

自社の事業構成をどのように組み替えていくかは、経営の最も重要な役割の1つと言って過言ではありません。
時間をとって、以下のようなステップでじっくり考えると、見えてくる事が沢山ある筈です。

▼5年後・10年後の売上構成はどうなっているか予想値を出す

▼その際、感情や思いは入れない。ビッグデータを解析するAIになったつもりで、データに基づいて冷静に予想値を出す

▼データとして用いるのは各事業のトレンド、売上を左右するkey指標(ex.塾ならば当該地域の子供人口、塾通い率、家計所得など)の推移、競合とのシェア推移など

▼上記売上で推移した場合、自社の5年後~10年後を支える事業はありますか? 営業利益はどうなりますか?

▼危うい場合どのように対処しますか?

▼そもそも5年後~10年後にどのような会社になっていたいですか?(ダノンのような判断軸となる理念はありますか?)

 

事業ポートフォリオを組みかえていく過程では、自社で新しい事業を作るだけでなく、M&Aや提携の活用も大事な選択肢です。

いずれ、「中小企業がM&A巧者になる実践法」をテーマにニュースレターを書こうと思います。

 

以上、「5年後の事業ポートフォリオを真剣に考えてみる」でした。