企業の人材育成の話になると常につきまとう論点があります。

人材育成における企業の責任は一体どこまでか? という問題です。

 

会社や上司が手間暇かけて育てるのは限界がある。
本人が自ら努力して学ばない限り、真の成長はない。
会社は学校じゃない。

正にその通りだと思います。

一方で、人材が現場で勝手に育つのを待つだけでは芸がありません。

 

企業の人材育成としてやれる事は多岐にわたりますが、私は最低限次の4つが不可欠ではないかと考えます。

1、意欲が出やすい環境を作る
2、明確なミッションや責任がある
3、フィードバックを受ける場がある
4、先輩や同僚の経験を学べる場がある

(※それぞれ後段で詳しく説明)

このような環境や場を提供する事が、少なくとも会社が果たすべき役割ではないでしょうか。

 

今の時期、ちょうど新入社員研修真っ盛りですが、どこの会社も新人研修は結構ちゃんとやります。

ところが3年、5年と時間が経つにつれ、ほぼOJTのみとなり、日常の育成は各部署任せ、個々の上司任せというのが一般的です。

このやり方でビジネスが成長した時代は、それが適したやり方だったと思います。

しかし時代は変化しています。

市場のパイが縮小し、変化のスピードが早く、採用は困難をきわめ、残業が減りリモートワークも増えていく(=社員同士が顔を合わせる時間が減る)今の時代、
人材育成を部署任せ、上司任せにして勝ち残れるとは思えません。

 

かつてピーター・ドラッカーは手厳しい指摘をしています。

『あらゆる組織が「人が宝」という。ところが、それを行動で示している組織はほとんどない。本気でそう考えている組織はさらにない。人材の育成こそ最も重要な課題であることを忘れてよいはずがない』

 

「人材育成はどこまでが企業の責任か?」という問いに単純な正解はありませんが、人材が大切と言うなら少なくとも満たすべきラインがあり、それが先の4つだと考えます。

非常にベーシックな部分において、企業が果たす責任です。

 

1、意欲が出やすい環境を作る

仕事の意欲は本人の問題だが、少なくとも意欲が出やすい環境を作るのは経営の役割。
フランクに意見を言える人間関係、人を大切にする風土、公明正大な制度、頑張れば評価される制度、後ろめたい仕事をやらせない、といった点です。

2、明確なミッションや責任がある

自分のやるべき仕事は何か、乗り越えるべき課題は何かを明確に伝えてあげる。
目指すゴールが曖昧だとしたら、努力しようにも迷ってしまいます。

3、フィードバックを受ける場がある

人は自分の事をなかなか客観的に見れません。第三者が本人に対してフィードバックする価値は想像以上に大きいです。
日常の業務で気づいたフィードバックもいいですし、例えば四半期に1回、何が改善したか、まだ足りない能力は何か? などをフィードバックして本人に考えさせる機会があると、人は更に成長します。

4、先輩や同僚の経験を学べる場がある

自分の経験から学べることは限られるので、先輩や同僚の成功体験や失敗体験を共有できれば、成長スピードは各段にあがります。
勉強会でも、教材でも、飲みの場で教わるでもやり方は問いません。
他者の経験に学べる機会や仕掛けを会社として用意する。
その機会を使うか使わないかは本人次第ですが。

以上4点に共通するのは、環境、場、機会の提供であるところです。

会社は育成の結果責任を負うのではなく、育成機会の提供責任を負います。

育つ育たないの根本は本人次第ですが、
育つ確率を高めるために会社は機会を提供した方がいいというのが私の考えです。

 

企業の育成現場を見ると、意欲の低い社員を鼓舞して一生懸命教えているのに、さしたる進歩もなく、上司が疲弊しているケースがあります。

真面目な上司ほど一生懸命面倒を見ますが、上記4点の1つめ「意欲が出やすい環境をつくる」がボロボロだとしたら、上司にはどうしようもありません。

上司対部下という個人戦に依存して意欲を出させたり、育て上げるのは無理があるんですよね。

上司の手腕に依存しすぎることなく、人が育ちやすい仕組みを作るのが、経営の大事な仕事ではないでしょうか。

 

以上、「中小企業の人材育成は、notお金but知恵」の最終回でした。