早いもので2017年も年の瀬が迫ってまいりました。

今年は「働き方改革」に関わる仕事に多くご縁を頂いたこともあり、今回は、働き方改革で中小企業が目指すべきこと、今なぜ働き方改革が必要か? という2点を中心にお伝えしたいと思います。

「働き方改革」という言葉のネガティブイメージから脱却する

「働き方改革」という言葉は、『ツドイカツヤク大作戦』と捉え直した方がいいと思っています。

2017年は「働き方改革」という言葉を見ない日はないくらい使われましたが、使い尽くされて、ややネガティブイメージのワードになってしまいました。

そのイメージが故に「働き方改革」をはなから敬遠する経営者も多くおられます。

が、考えれば考えるほど「働き方改革」は今取り組むべき大事なテーマなので、言葉のイメージを捉え直した方がいいと考えました。

なぜ、『ツドイカツヤク大作戦』なのか?

キャッチコピーのセンスがなくて申し訳ありませんが、1つの意味は、人材がツドウ(集う)会社になること。
会社が来て欲しいと思う人材が関心を持ち、集まってきてくれることです。
老若男女、正社員/パート・アルバイトなど区別しません。

もう1つの意味は、そこに集まった人材がカツヤク(存分に力を発揮)できる会社になることです。

「〇〇改革」というと上から指示される痛みを伴う活動のイメージがありますが、「働き方改革」は経営陣も社員も一体となって進めていく前向きな活動なので、「大作戦」としました。

 

世間の働き方改革に左右されない

「働き方改革」  イコール  「長時間労働削減」・「女性活躍」・「有給取得促進」・「育児介護支援」を進めること 、みたいなイメージが強くなり過ぎた気がします。

働き方改革の定番メニュー化、横並び化と言っていいでしょう。

「働き方改革」は元々政府の掛け声で始まり、最初は本質的な議論もされていましたが、電通問題をきっかけに働き方改革の論点が残業規制にばかり向かってしまったのも非常に残念です。

 

しかしながら企業は政府の意向にかかわらず、自ら選択する権利をもっています。

残業削減から手をつけるのもあり、管理職の意識改革から着手するのもよし、社内コミュニケーションや信頼関係の構築を優先するのもあり、副業解禁からスタートするのもあり。 何をやるか、何からやるか。全て企業の自由です。

国が「働き方改革」と言うから何かしないといけないとか、他社がやっているから当社もやらなねば・・という受け身発想ではなく、会社が持続的に発展していくために『ツドイカツヤク大作戦』にどう向き合うかが問われています。

 

働き方改革とマズローの欲求五段階説

有名なマズローの欲求5段階説はご存知の方が多いと思います。

この理論の第2段階は「安全の欲求」というものです。

職場でいえば、労働条件とか職場環境、福利厚生などを通じて安心して働くことができるかを求める段階です。
(ちなみに、第2段階の欲求が満たされなければ、人は第3、第4と上の段階に上がっていけないというのがマズローの理論です

では、今「働き方改革」で議論されている事は第何段階と言えるでしょうか?

実は議論されていることの大半は第2段階の話なのです。

日本の会社はとっくの昔に第2段階は充足させてきたという感覚があるかもしれませんが、過剰な残業やブラック企業の存在など第2段階が危うい状況が起きているので、この解決は待ったなしです。

 

しかしながら、第2段階を是正すれば社員が急に頑張って働くようになるでしょうか?
それは恐らく期待できません。
仮に残業が減り、有給が取りやすくなったからといって、社員の働きぶりが大きく変わる中小企業は稀でしょう。

人がより高次の欲求に目覚めて意欲的に働くためには
(つまり、第3段階:帰属の欲求 → 第4段階:承認の欲求 → 第5段階:自己実現の欲求 へと上がっていくためには)、
社員が会社に愛着を感じ、頑張って周囲から認められ、公平に評価され、より難易度の高い仕事のチャレンジしていこうという気持ちをかきたてなければなりません。

そういう観点でいくと、働き方改革の議論が低位のレベルにとどまっていることがわかります。

 

人材の力による企業の発展

とっても当たり前のことを書きます。

企業が発展していくためには、いい人材が必要です。
その人材に辞めずに長く活躍してもらう必要があります。
その人材がくすぶっていては意味がありません。持てる力を存分に発揮してもらう必要があります。

ところが、この当たり前を阻害する要因が会社の中にはゴロゴロ転がっています。

ビジョンのなさ、戦略戦術の欠如、曖昧な役割と責任、意思決定しない、無駄な会議、無駄な業務、過度な残業、男女や年齢に向けられる偏見・働きづらさ・不公平、家庭事情や健康への配慮のなさ、曖昧な評価制度、頑張っても報われない報酬制度、風通しの悪さ、良くない人間関係、ポストの硬直化、前例踏襲主義、若手の意見を押さえつける上司、などなど。

どこの会社も頭を悩ます問題ばかりですが、上記のような阻害要因があればあるほど、その会社は人が辞めやすく、採用が進まず、社員が惰性で働き、能力を発揮し切れていません。社員の性別や年齢、職種により、何を阻害要因として感じるかも異なるでしょう。

『ツドイカツヤク大作戦』でやるべき事は、会社が大切にすべき人材が感じている重大な阻害要因を1つ1つちゃんと取り除いていく戦いです。
敢えて戦いと表現するのは、一朝一夕に改善するほど生易しい問題ではないからです。

阻害要因をクリアすると並行して、自社の魅力、社員がそこで働く魅力をより鮮明に打ち出していくのです。

 

なぜ今なのか?

『ツドイカツヤク大作戦』に着手するのは早い方がいいでしょうか?

私は早ければ早いほどいいと思います。
時間のかかる改革なので、スタートが遅いと他社からどんどん引き離されてしまいます。
もはや待ったなしだと感じています。

その理由は誰もが感じている世界最速の少子高齢化、人手不足に他なりません。

・2016年の出生数は団塊世代のピーク(1949年)の3分の1まで減り、100万人を割りました。若くて優秀な人材は今後も採りたくてもなかなか採れません。

・アベノミクス以降就業者数が増えたと言われていますが、増加分の大半は中高年の女性です。2020年には日本人女性の半分が50歳以上になります。

クロネコヤマトの宅急便は配達指定時間が不便になりましたよね。
24時間営業を見直す飲食店も続出しています。休館日を増やす旅館も出てきました。
「お客様は神様」を追求してきた日本の歴史において、敢えてサービスの質を下げるという意思決定をし始めたのは象徴的な出来事です。

時々、クライアント企業に10年後の年齢構成を書き出してもらうことがあります。
特に新規採用で苦労している会社は、現有社員がそのまま年を重ねるので、10年後は50代~60代が中心メンバーなんて事もよくあります。

50代の親は80代だとすると、親の介護が大きな問題になり、仕事への影響も避けられません。
そういう会社はシニアの雇用継続や勤務形態をどう設計していくか、他方で若手~ミドルの人材をいかに確保するか真剣に考えていかねばなりません

他にも人をめぐる様々な問題が襲ってきます。

・東京圏では優秀で意欲的な人材ほど、副業・兼業や独立に積極的になっています。この傾向は徐々に全国に波及していくでしょう。固定的な正社員だけで会社を運営するより、社内外の様々な知恵を活用できる会社が強くなっていくでしょう。

既にAI技術者などは新卒でも年収数千万円がグローバル相場となっており、日本企業はついていけていません。
他の職種も給与格差が広がる可能性が高いです。

・外国人技能実習生への依存度が高まっていますが、外国人にとって日本は魅力的な労働環境とは言えなくなっています。(理由は、高くない報酬、劣悪な労働環境、キャリアアップの道がない、英語が通じない、等々) 外国人活用にも本気で向き合う必要が出てきました。

 

一方で、逆のベクトルの動きもあります。

今人材が足りない足りないと言っていますが、AIやロボットの活用が進むと、仕事で求められる能力が変化します。

単純定型業務ばかり担当し、時代の変化に取り残される社員にはやらせる仕事がなくなるかもしれません。
解雇する訳にもいかないし・・・と、人手不足の今とは逆の悩みが出てくる可能性もあります。

社員の育成観点からみれば、「働き方改革」で働きやすい環境を用意してあげるだけでは、時代の大きな変化を乗り越えられる力がつきません。働きやすい環境で満足させるにとどまらず、社員の自律的な働き方、能力の向上につなげる視点も外せないと思います。

 

『ツドイカツヤク大作戦』に早く着手した方がいい理由として、色々な事象を述べて参りましたが、企業の人材をめぐる活動においては、これだけ沢山の変化が既に生じ始め、10年後には今とは異なる働き方が待ち受けています。

この変化に対して「うちは特に関係ないよ」と言い切れる企業は果たしてあるでしょうか?

 

以上、『働き方改革を「ツドイカツヤク大作戦」へ!』でした。